先月初旬、ツアー下見の為に中国四川省のチベット自治区を車で走っていると、標高3,500mを越えた草原の中で佇むオグロヅルの親子を見つけました。オグロヅルは英名では「Black Necked Crane(首の黒いツル)」、北海道に生息するタンチョウヅルよりやや小柄な種です。
彼らはインドのジャンムー・カシミール州東部や、中国の甘粛省、四川省、青海省、新疆ウイグル自治区、チベット自治区などの人里離れた高地の限られた平原で繁殖し、冬はベトナム北部、チベット南部、或いはヒマラヤを越えたブータンやネパールで越冬します。絶滅危惧種に指定されており、なかなか出合う事が難しいと言われており、今回の下見で運良く出合えたからと言って、ツアー本番で見つかるとは限りません。
私たちが見つけた個体は親子でした。写真の2羽のうち、左が親鳥、右が今年の夏に生まれた雛鳥です。そして写真には写っていませんが、親鳥がもう一羽…親子3羽連れです。雛鳥はもうすっかり大きく育ちましたが、まだまだ甘えん坊。しきりと親鳥に餌をねだり、親鳥は交互に昆虫を探しては、何度も雛に与えていました。
今頃はきっと親子3羽で越冬地に向かって渡りの途中でしょう。遥かヒマラヤを越えて旅しているかもしれません。私はこれから次のツアー下見でネパールに行きます。もしかしてまたあの仲の良い親子に出合えるかも・・・いやそんな偶然はきっとあり得ないでしょうね。越冬地で過ごしたあと、春には再び親子3羽で再び同じ四川省に戻ってきます。でも親子の暮らしはそこで終わり。
親鳥は若者に育った我が子を追い払い、次の繁殖活動に入るのです。そして追い出された若者は、繁殖地で生涯の伴侶と出会い、数年後には3羽での姿を見せてくれることでしょう。
ワイバード
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