バードウォッチングツアー専門の旅行会社「ワイバード」バードガイドの森山です。
今日はハリーポッターで有名になったシロフクロウのお話です。「シロフクロウ?動物園で見た、見た!」という声が聞こえてきそうですが、「野生」のシロフクロウを「自然の中で」見ないと気が済まないのが、バードウォッチャーという人達なのですね。
「野生」のシロフクロウ、実は日本でも記録のある鳥です。でも、やってくるのは主に冬でほとんどが北海道、いるのは海岸や原野など広くて探しにくい場所、来ても1羽の事が多い、とどめは日本には滅多にやってこない。と、観察難易度がとんでもなく高い鳥です。北極圏で繁殖する鳥ですから難易度が高いのは当たり前。でも、難易度が高い鳥、珍しい鳥、数の少ない鳥ほど見たくなるのもバードウォッチャーの心理です。言わば憧れの鳥ですね。
昨年末から今年にかけて、この憧れのシロフクロウが全米各地に大挙して飛来しました。一説には数千羽という単位だそうですが・・・。理由は定かではありませんが、昨シーズンのレミング(タビネズミ)の数が多かったことでシロフクロウのヒナが多く育ち、個体数が爆発的に増加したのではないか、と推測されています。カナダ、バンクーバーにも11月中旬から飛来が始まりました。バンクーバーでの越冬記録は5年ぶり、12月初めで31羽という数は10数年ぶりのことだそうです。日本からも大勢のバードウォッチャーが憧れの鳥を求めて出かけて行きました。
「ワイバード」でも先月バンクーバーツアーが催行されました。元々シロフクロウの飛来とは関係なく2月下旬に予定していたものですが、憧れの鳥飛来とあってボルテージが上がります。今年この季節に行けば、シロフクロウが見られることは十中八九間違いないところですが、見るまでは安心できないのもバードウォッチャー心理。「ひょっとしたら、我々が現地に行く日の前日に全部飛び去ってしまうのではないか?」なんて事を真剣に心配するのです。
2月19日夕刻に成田を飛び立った飛行機は現地時間19日朝、バンクーバー空港へ到着。現地ガイドと合流して、真っ先にシロフクロウのいるポイントに急ぎます。海岸に連なる原野に小さな子供ほどの大きさの白い頭が見えました。待望のシロフクロウです。普通はこんなに簡単に見つかると拍子抜けするところですが、だれも文句は言いません。憧れの鳥との出会いに一瞬魔法にかかったかのごとく立ち尽くします。しばらくして魔法が解けると望遠鏡での観察や、写真撮影が始まります。
翌日は場所を変えて総数28羽がいるというポイントへ。シロフクロウは昼間も狩りをすることはありますが、大体は地面でおとなしく休んでいます。バードウォッチャーやカメラマンが動くと多少は顔を動かしたりしますが、大抵は平気です。野生の鳥は警戒心が強いものですが、近くの遊歩道を大勢の人が犬を連れて散歩しているのに、ビクともしません。バンクーバーに住む人と鳥、日本では考えられない信頼関係が、私には何よりも魔法としか思えませんでした。