ベトナムの大都市ホーチミン市の路地裏探検

ベトナム南部のホーチミン市といえば、整然と並ぶ街路樹やコロニアル様式の建築、経済発展にともなって雨後のたけのこのように生まれた高層ビル、しゃれたレストランやカフェ、そしてその間を無数のバイクが走る、そんなイメージが強いのではないでしょうか。

ですが、大通りから1本入った路地、それもどこからその路地に入ったのかわからなくなってしまいそうな、くねくねした路地裏に入ると、ホーチミンのもうひとつの顔と出会えます。それは、力強く生きるベトナム人の暮らしぶりです。そんな路地へ足を踏み入れてみました。

プラスチックの背の低い椅子に腰掛けて大人が新聞を読み、時間をかけてベトナム・コーヒーを片手におしゃべりを楽しむ傍らで、子どもたちが元気いっぱいに 追いかけっこをして遊んています。ホーチミンにはなぜか、よちよち歩きの子どもに外でご飯を食べさせる習慣があり、子どもの後を、ご飯を入れたお椀とス プーンを持ってお母さんやおばあさんが追いかける姿も路地裏ならではの光景です。
「あら、あんたどこ行くの?」
路地裏には、名前のわからない子どもなんていません。みんなお母さんのおなかにいる時からのおなじみさんです。子どもが何か悪さをすれば、自分の子ども、 他人の子ども関係なく大人が叱りつけます。そうした光景を、昭和30、40年代の日本の風景と重ねる方も多いようです。

路地に入ってしばらくすると、少しずつ露天や店が増え、そこには路上で朝食をたべたり、昼食や夕食の食材探しにやって来た人々の姿がありました。朝食は、 通勤途中に買って会社で食べるか、通勤途中に路上の屋台で食べるのがホーチミンのやり方。とうもろこしのおこわや、バインクーンとよばれる蒸し春巻きは、 朝の屋台で見かけることが多いですし、ビニール袋にいれた豆乳(写真)をバイクのハンドルに引っ掛けて、時々飲んでいる姿もよく見かけます。

路地の突き当たりには、小さいけれどにぎやかな市場がありました。露天や市場では値段は交渉なので、丁々発止のやりとりがあちこちで行われています。そう そう、市場に行く時は、ドーべーと呼ばれる上下揃いの派手な柄の普段着にサンダル履きが定番です。売り子さんももちろんドーべー。おしゃれなドレスなんか 着てたら最後、値段交渉に負けちゃうかも!?
「邪魔だよ、邪魔」バイクのクラクションです。すり抜けられれば、どんな狭い路地裏にも入ってくるベトナム名物のバイクですから、値段交渉ばかりに気をと られてはいられません。クラクションくらいじゃひるまないベトナム人のたくましさは、市場に来ると培われるのかもしれませんね。最近、物価が上がって大変 だとは聞きましたが、路地も突き当たりにある市場も変わらずにぎやかで、強烈なエネルギーを発しているように感じました。

ホーチミンの路地に入ると、小さな一つひとつの日常が見え、それらが町を活気づけて元気な国を形作っているのだなということが実感できます。
活力あふれるホーチミンの路地裏に、元気をもらいに行ってみませんか。