エチオピアの岩窟教会と言えば、世界遺産にも登録されている、巨大な一枚岩を刳り貫いて造営されたラリベラの岩窟教会群があまりにも有名ですが、エチオピア北部のティグレ州には、それに勝るとも劣らない、訪問する価値のある岩窟教会が何と約120カ所も存在しています。
ティグレ州の岩窟教会群が位置しているティグレ州には、荒涼とした半砂漠の中に岩山が屹立している風景が広がっていますが、教会群はこれらの岩山に横穴を穿つ形で、あるいは元々あった洞窟を利用してその入り口及び外側に教会の建物を増築した複合建築物の形で造営されており、大きな一枚岩を縦方向に掘り進めていき、教会の形状を作り出したうえで横方向に内部を掘り進めて行ったラリベラの教会群とは造営の方法が異なり、造られた年代も12~13世紀と言われるラリベラのものよりずいぶん古い時代、エジプトやシリアからエチオピアでキリスト教が伝わってきた5~6世紀までさかのぼるといわれています。
正教系のキリスト教では、聖職者が隠者として人里な慣れた場所に孤立し、洞窟などで祈りと瞑想の生活をおくることがあるそうですが、ギリシャのアトス山、エジプトのワディ・ナトルーン西部の砂漠の洞窟などと同様に、このエチオピアのティグレ州でも人里離れた岩山の洞窟に籠って、修道士が瞑想を始めたのがこれらの教会の起源とも言われています。
各教会・修道院訪問のベースとなるのがゲラルタ(またはハウゼン)と呼ばれる街ですが、ここにあるロッジをベースに、車と徒歩でアクセスします。修道士が一般人の目や外の社会から自らを切り離して隠遁生活をおくるための施設となっていますので、道ができ、車が走るようになった現代でもアクセスは容易ではありません。約120カ所ある教会を代表するアブーナ・イェマタ教会は、別名「鷹の巣」とも呼ばれるとおり非常に高い切り立った岩山の岩肌を横方向に刳り貫いて造られており、訪問者も半ば岩登りのような形でなければたどり着くことができません。とは言っても、今では訪問する観光客も多く、修道院の輔祭さんが荷物を持ってくれたり、危険個所の通過をサポートしてくれたりしますので、女人禁制の修道院・教会でない限りは、誰でも訪れることができます。
刳り貫かれた修道院の内部に入ると、壁面はいかにも年月を経た壁画が壁一面を飾り、簡素な祭壇もしつらえられています。壁画は繰り返し塗りなおされているそうですが、非常に古いものであることが一目でわかるものもあったりして、エチオピアのキリスト教が信仰されてきた気の遠くなるような長い歴史を肌で感じることができます。
ということで、訪問する価値の非常に高い場所、個人的には世界遺産のラリベラ岩窟教会よりもこっちの方が興味深いと常々感じているティグレ州の岩窟教会群ですが、これから少しずつ訪問者が増えてくるのではないかと思います。世界遺産の陰に隠れた世界遺産級の教会群、是非足を運んで、ご自身の目で見てみてはいかがでしょうか?
アフリカ旅行の道祖神
https://www.dososhin.com/