トルコの山といってもあまり想像ができないかもしれませんが、東部のイランとアルメニア国境近くに、標高5135mのアララト山が聳え立ちます。富士山と同じ単独峰の火山で、裾野を広大に広げる姿は印象的です。
このエリアはイラン国境に近く、クルド人の居住区にもあたるため、長らく政情不安定な地域として登山が禁止されていましたが、ここ近年に政情も安定し入山が許可されるようになりました。
この山は、旧約聖書にでてくるノアの箱舟が大洪水の後、流れ着いたとされる山で、神話の山としても世界に広く知られ、世界中の登山家が集まってきます。また、ノアの箱舟が埋まっているという舟の形をした丘があります。科学的な裏づけはありませんが、博物館があるので登山後に訪れることもできます。
登山のベースとなる町、ドウバヤズットの標高は1600m。山頂の標高が5135mなので、3500mの標高差が作り出す景色の移り変わりを見ることができるのが、この山の登山の魅力です。
標高の低いエリアでは、草原が広がります。乾いた土地なので、日本でイメージする草原とは少し異なりますが、いくつもの種類の高山植物が咲いています。また、この草原を利用してクルド人たちが酪農を行っていて、登山中に酪農小屋を訪れると手作りのパンやヨーグルトで、もてなしてもらえます。標高が上がるにつれ植物もまばらになり、砂漠のような乾いた岩と土だけの世界に。そして山頂付近は標高5000mを越えるため、真夏でも雪で覆われる冬の世界。夏から冬に季節を旅するような、変化に富んだ景色が楽しめます。
雪上歩行と山頂へのアタック時に標高差があるので、しっかりとした体力と簡単な雪山の登山経験が必要ですが、アフリカ最高峰キリマンジャロ(標高5895m)の次のステップとして最適な山です。
この登山で訪れるエリアは、観光地化されていない素朴な田舎町。地元のローカルなレストランで世界3大料理の一つであるトルコ料理を堪能したり、世界有数の親日家といわれるトルコの人々との交流など、登山以外にも色々と楽しめる旅になります。
ありきたりのトルコ観光旅行では見えてこない、「本当のトルコ」を体験しながら、登山を楽しんで見ませんか。