ヨーロッパアルプスの山は日本の山とは違い、氷河が堅い岩盤を削ってできているために、個性的な岩山が多く、またその岩の間に氷河が流れ、色々なアクセントを付けています。
もう一つのアルプスの特徴は、峻鋭な山々の山麓に広がるお花畑です。
アルプスの語源となった「アルプ」とは、標高の高いエリアに広がる草原地帯のこと。標高1800~2000mを越えると、自然条件が厳しくなり木が生えることができない森林限界を迎えます。その上には草原が広がり、夏には高山植物がいっぱいに咲くお花畑になります。まさしく、「アルプスの少女ハイジ」で、ペーターとハイジが、毎日ヤギのユキちゃんたちを連れて行った、山の上のお花畑です。
この広大なお花畑の背後に、夏でも氷河を抱く岩山が聳え立つ、「岩」「雪」「草原」「高山植物」が作り出す、柔と剛のコントラストが、ヨーロッパアルプスの大きな特徴になります。
素晴らしい景色が楽しめるヨーロッパアルプスですが、古くから欧米人のリゾートとして発展しているため、登山鉄道やロープウェーといった交通機関が至るところに張り巡らされ、それにあわせ数えることができないくらいのハイキングコースも整備されています。
登り、下り、線路沿いの平坦なコースなど、多様なコースが用意され、それぞれのレベルに合ったコース選びができます。また、山麓のリゾートには、快適なホテルがたくさんあり、都会的な生活をしながら、簡単に壮大な山の景色を楽しむことができます。
さて、誰にでも手軽に楽しめるアルプスの山々ですが、今回は山岳ガイドの私が、とっておきのお勧めをご紹介します。
それは、山小屋に滞在すること。
ホテルがある山麓のリゾートは、一般的に氷河が削ったU字渓谷の底にあります。聳え立つ山の迫力は体験できても、地平線に沈む夕日や、昇ってくる朝日は楽しめません。
また、昼間は観光客やハイカーで賑わうアルプスも、最終の登山電車が下った後は、打って変わって静かな世界になります。
山小屋というと、雪や岩を登る本格的な登山を楽しむ「アルピニスト」の世界かと思われていますが、山小屋は「ハイカー」と「アルピニスト」の分岐点。ここまでは、ハイカーでも簡単に訪れることができるのです。
また、山小屋の宿泊は非常に快適です。日本の山小屋のように詰め込まれることも無く、きちんとスペースが確保され、清潔なマット、毛布、枕が一人一人に用意され、快適に宿泊ができます。そして、食事に手を抜かないヨーロッパらしく、スープ、サラダ、メインディッシュ、デザートとホテル顔負けの美味しいメニューも楽しめます。
喧騒が終わり静かになったアルプスで、真っ赤に染まる夕焼け・朝焼け、そして満点の星空。ゆっくりと大自然に向き合いながら、アルプスの本当に素敵な時間を、山小屋で体験してみては、いかがでしょうか。