チベット人の情熱的な愛

こんにちは。風の旅行社です。
今回は、風の旅行社ラサ常駐駐在員を勤めながらチベット圏をフィールドワーク中の文化人類学者・村上大輔より、チベット人の情熱的な愛についてお話しさせていただきます。

チベットの都ラサ―。
何世紀も昔から内陸アジア最大の<聖都市>として栄えた街であるが、もちろん男女のいるところ、愛は育つもの。
有名な仏教巡礼地のすぐ横などには、「伝統的なデートスポット」がある。

最も著名なものは、世界遺産にも入っているポタラ宮殿の裏側にあるルカンであろう。(写真中央の木々のなかにそれはある。)
ルカンとは「龍の館」の意味である。
このルカンの周囲には池があり、龍神の棟梁が棲んでいるとされているが、この池の周りに夕方薄暗くなると若いチベット人のカップルたちが集まってくる。

このルカン、数年前に整備され、綺麗になりすぎた感はあるものの、古い木々のあるおかげで、遠目には隠れることができ、カップルたちも池に映った自分たちの姿を観ながら、愛を囁(ささや)きあうのである。

チベット人がいかに口説き上手か、いかにベタベタのロマンチストか、それはこちらの<現代ラサ・愛の言葉コレクション>を見ていただきたい。
みなさんにも何らかのヒントになるでしょう!?

さてルカンであるが、実はここは、信心深いチベット人にとって重要な巡礼地でもある。
若者たちが、濃厚な接吻を交わしている間に、巡礼中の自分のお母ちゃん、おじいちゃんに見られた!
なんてことにならないように、実はもっとディープな逢引きの場というのがある。

それは、ラサの南に流れるキチュ河―。
キチュとは「悦びの水」の意味であるが、なんとも意味深長な。
このキチュ河沿いで、カップルたちはやっと手を繋ぐことができるのである。

チベット人は仏教の影響であろうか、「恥ずかしいふりをする」習慣がある。
男同士・女同士は公共の場で手を繋ぐことも多いが、カップルは街中では手を繋ぐことはほとんどない。(ラサの中心街を歩いていると、屈強な男達が手を繋いで歩いているのをよく見かけるが、実は彼らはゲイではない。純粋な友人として、男として、男を好いているのだ・・、ってこれはゲイの定義か?)

しかしながら、チベット人は元来大胆な性格の持ち主なので、「悦びの水」キチュ河に囲まれながら、大人の恋も、子供の恋も、禁断の恋も、やっと自由に羽ばたくことになる。

<チベット=仏教>のイメージが強く、よく忘れられることであるが、チベット人は仏教徒である前に、人間なのである。
ということで、自然、デートスポット・逢引きの場が、聖都市ラサのあちこちに発生することになる。