先日、盈徳(ヨンドク)という韓国東海岸の小さな町に行ってきました。東は日本海に面し西は標高800m前後の山々が連なる自然が豊かな土地ですが、首都ソウルから遠く鉄道や高速道路もないため、外国人観光客にはほとんど馴染みのない所でもあります。港で最も賑やかなのは江口(カング)港という河口に開けた天然の良港で、この時期冬から春にかけてはズワイガニの水揚げが国内随一と言われています。ここで獲れた蟹は盈徳大蟹(ヨンドク・テゲ)と呼ばれ、韓国では知らない人はいないほど有名です。ただし漁場は鳥取・兵庫の松葉ガニや福井の越前ガニと同じで味は日本のものと変わりません。
一方、山間部では桃、葡萄、林檎等の果物が多く栽培されており、秋になると産地直送の簡易店舗が国道沿いに並びます。また、春4月の上旬の頃には桃の花が咲き乱れ、知る人ぞ知る韓国の桃源郷とも呼ばれています。
私は冬本番の1月下旬日帰りでここを訪れ、効率的に周るためタクシーをチャーターしました。まだ枝だけの桃畑や昔の貴族が暮らしていた伝統家屋村、そして港や海岸を見て廻りました。タクシーの運転手さんは50歳代位の気さくな方で、私が見学をしている場所について熱心に説明をしてくれました。降車する頃にはすっかり打ち解けて、いろいろと雑談もするようになりました。
海岸沿いを走っている時に運転手さんが「この海をまっすぐ行くと日本に行きますよ」と訳ありな感じで話しかけてきました。私は咄嗟に日本と韓国の間で領土問題となっている竹島を思い出しました。そう、ここは竹島[韓国名:独島(トクト)]最前線の町の一つでもあるのです。今見ている日本海。韓国人はこの海を東海(トンヘ)と呼びます。しかし気が付いてみると私に気を使っているのか、運転手さんはこの呼び方もしていませんでした。このような所で日本と韓国の現実を感じたのは意外でした。また、運転手さんの心を感じ若干の感動を覚えました。
この後、運転手さんは「韓国は国を分断されていることで、この辺りはかつて北朝鮮からスパイが上陸してきました。それを防ぐためにたくさんの監視所があったのですよ。しかし今はありませんけどね」韓国の片田舎で韓国の現実を見せられた旅となりました。
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