富士登山と青木ケ原樹海清掃ボランティア

富士山は古来より日本の象徴とされ、誰もが一度は登ってみたい憧れの山です。ここ数年は、夏のシーズンだけで約30万人もの登山者が山頂を目指し、一大登山ブームとなっています。
夏の富士山は難しい登山技術が必要なく、誰にでも簡単に登れるイメージですが、標高3776mの高山。天候が崩れると一気に厳しい姿に変わり、山頂はこの時期でも雪になることもあります。安易に考えず、十分に情報を集めて、しっかりとした装備を持ってチャレンジして下さい。

さて、そんな富士山ですが、今回は山岳ガイドとして快適に登るコツを一つお教えします。

それは「とにかくゆっくり歩くこと」

簡単のようで実は非常に重要なポイントです。
ゆっくり歩くことは高山病対策に非常に有効な手段。標高が高くなると気圧が下がると共に酸素分圧も下がります。このため、一回の呼吸で摂取できる酸素の量が減るため酸欠状態になり、頭痛、吐き気、眠気、浮腫み、無気力、運動能力の低下などの症状が現れ、時には大きな事故に繋がることもあります。

標高の低い前半で、体調が良いからといって速いペースで歩いている登山者をたくさん見かけます。飛ばしすぎると気づかないうちに酸欠状態が進み、山頂近くで一気に高山病の症状がでてきてしまいます。スタート地点から絶えず深呼吸ができる、ゆっくりペースで歩き、少しでも酸欠状態にならないようにすることが、登山を成功に導く大きなカギになります。

富士山は童謡「ウサギとカメ」と一緒。ウサギのように急いで登った人は、山頂近くで高山病で動けなくなり、終始カメのようにゆっくり歩いた人が、最後にウサギを抜かしてゴールします。賢くカメのように登ることが富士登山の秘訣であるとともに、快適に、そして安全にも繋がります。ゆっくり、ゆっくり登ることを忘れないで下さい。

さて、富士山といえば登山ばかりが注目されますが、山麓には素晴らしい大自然が残っています。たとえば、富士五湖の本栖湖から西湖付近に広がる青木ヶ原樹海の原生林です。

森は生まれてから、その土地の標高、緯度、方角などの気候に適した形に成長してゆきますが、最終的には極相林といわれる安定した状態になります。一般的に極相林になるまで5千~1万年かかるといわれています。

日本の本州は、人が手を入れなければほとんどが「ブナ」の極相林になるといわれています。しかし、青木ヶ原の原生林はブナではなく、ツガやヒノキなのどの針葉樹林が広がっています。これはブナの森になるまでの途中経過の状態なのです。どうして途中なのか。富士山が火山であることに起因しています。富士山は何度も噴火を繰り返し、周辺に様々な影響を与えています。平安時代初期、864年の貞観大噴火のときに、大量の溶岩が流れ出し、このエリアの森を焼き尽くし、そして溶岩で覆いました。その状態から改めてスタートした成長過程の森が、今の青木ヶ原樹海です。生まれてからまだ1150年あまり。すなわち子供の森です。

世界的にも成長過程の森が、人里近くでこんなにも簡単に見られる場所は、なかなかありません。是非とも、登山だけではなく、この貴重な自然にも注目して下さい。

そして、この青木ヶ原樹海の原生林が抱えている問題も知ってほしいのです。

あまり人が入らない青木ヶ原樹海は、実は不法投棄の温床となってしまい、色々なゴミによって、この貴重な自然が脅かされているのが現状です。

この9月に現地で清掃活動を行っているNPO法人「富士山クラブ」と協力して、富士山に登ると共に、この素晴らしい自然環境を守るため、青木ケ原樹海周辺の清掃活動を行うボランティア&登山ツアーを実施します。

実際に素晴らしい自然を肌で感じながら、その貴重性、自然環境の大切さ、そして保護活動の必要性を改めて認識してもらうためのエコツアーです。

ただ単に登るだけではなく、その自然環境、そしてその自然がおかれている状況も考えながら登山をすると、より充実した、思い出深い富士山登山になるのではないでしょうか。

株式会社アドベンチャーガイズ
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